ショート動画をぼんやり見ていたら、少し気になる話が流れてきた。
ガソリン高の原因を中東情勢だけで見るのは浅い。日本はイラン原油に大きく依存していない。むしろ市場は、SAFや廃食油からつくる航空燃料の流れを見ていて、そこから石油の時代から次世代エネルギーへの資金移動が起きている――そんな話だった。
こういう話には、つい立ち止まってしまう。
話としてうまいのだと思う。生活の中のガソリン高という身近な不満から始まって、気がつくともっと大きな、時代の変わり目みたいな話へつながっていく。見ている側も、表面だけ見ていたら駄目なのかもしれない、という気分になりやすい。
しかも少しやっかいなのは、全部が雑な話でもないことだ。
SAFも、廃食油由来の燃料も、現実に進んでいる。日本でも供給体制づくりは少しずつ動いている。だから余計に、話全体が本質っぽく見えてくる。
最初は、なるほどと思った。
でも、少し時間をおいてから、いや待てよ、とも思った。
この話は本当に、今のガソリン高の説明になっているのだろうか。
たぶん、ここはいったん分けて考えたほうがいい。
ガソリン高の原因の話。
日本のイラン原油依存の話。
それからSAFや廃食油航空燃料の話。
この三つは関係はあるけれど、同じ線の上にきれいに並ぶ話ではない気がする。
ガソリン高の原因は本当に中東情勢だけなのか
ガソリンが高い。
これはもう、言われなくても分かる。
スタンドで価格を見るたび、少し気が重くなる。昔はこの数字を見るだけで、週末の出かけ方まで変わったりしたものだ。
けれど、じゃあその原因は何かと言われると、ひとつではない。
原油価格が上がる。
円安になる。
補助金の効き方が変わる。
税制もある。
流通コストもある。
いろいろなものが重なって、最後に店頭価格として出てくる。
だから、「中東情勢だから高い」と言い切るのは少し雑だと思う。
でも同じように、「もう市場は中東なんか見ていない。SAFを見ている」と言い切るのも、やはり飛びすぎている。
このあたり、人はどうしても答えをひとつにしたくなる。
原因はこれです、と。
そのほうが分かりやすいし、気持ちもいい。
でも、分かりやすすぎる話は、だいたい何かを省略している。
今のガソリン高を見るときに大事なのは、たぶんそこだ。
目先の価格が上がる理由と、これから先のエネルギー構造が変わっていく話を、同じテンションで混ぜないこと。
似ているようで、この二つは少し別の階層にある。
今日の価格を見るなら、原油とか為替とか補助金の影響のほうがずっと直接的だ。
一方で、SAFや廃食油由来燃料の話は、どちらかといえば5年先、10年先に「世の中こう変わるかもしれない」と見る話だと思う。
この二つを一本の線でつなげたくなる気持ちはよく分かる。
動画としても映えるし、見ている側も「なるほど」と思いやすい。
でも、そこを雑にくっつけると、話はきれいでも現実は見えにくくなる。
世の中はそんなに親切に一本線では動いてくれない、という感じがする。
日本はイラン原油に依存していない。でも中東リスクは消えない
動画の中で、いちばん引っかかったのはここだった。
「日本はイラン原油に大きく依存していない。」
これは、視点としては面白い。
なんでも中東情勢で片づける前に、日本は実際どこから原油を調達しているのかを見る。そこまでは、むしろちゃんとした態度だと思う。
ただ、この話にはもう半歩いる。
日本がイランから直接あまり買っていないとしても、中東全体が緊張すれば、原油市場全体は落ち着かなくなる。
さらに、ホルムズ海峡のような輸送の要所が不安定になれば、供給そのものだけでなく、運ぶことへの不安やコストまで広がっていく。
つまり、
イラン原油への直接依存が低いことと、
中東リスクの影響を受けにくいことは、同じではない。
ここをひとつにしてしまうと、話は鋭く見える。
でも実際には、そこまで単純ではない。
“イランに依存していないから大丈夫”という話ではなくて、中東全体の供給網や輸送の緊張から、日本はやはり切り離されていない、というほうが近いのだと思う。
結局、原油の話はいつもそうだ。
どこか一か所だけを見ていても、全体が見えた気になりやすい。
でも、見えた気になったときほど、少し危ない。
人は、答えを一個にしたくなる。
ガソリン高の原因はこれです、と。
そのほうが気持ちいいからだ。
でも、原油の世界はどうもそんなに単純ではない。
そこはもう、認めるしかないのだと思う。
SAFと廃食油航空燃料は本当に次の本命なのか
ただ、その一方で、SAFや廃食油航空燃料の話を軽く見るのも違う。
ここは、わりと本当に進んでいる。
廃食油が航空燃料になる。
言葉だけ聞くと、少し出来すぎた話にも見える。
でも実際には、日本でも供給体制づくりや商用化へ向けた動きが出てきている。
つまり、これは単なる煽り文句ではなく、現実に芽が出ているテーマだ。
だからこそ、この手の動画は妙に強い。
一部がほんとうだから、全体までほんとうに見えてしまう。
完全なウソなら、たぶん引っかからない。
でも、三割とか四割とか、本物が混ざっている話にはつい耳を傾けてしまう。
ただ、ここでも勢いで飛ばしすぎると、やはり見誤る。
SAFは重要だと思う。
今後の航空業界にとっても、かなり大きなテーマになるはずだ。
でも、だからといって、もう石油の時代が終わるとか、主役交代が始まっていると言うには、まだ早い気がする。
供給量もある。
コストもある。
原料の確保もある。
制度やインフラの整備もある。
未来へ向かう流れではあっても、それがすぐ今の現実を塗り替えるわけではない。
このあたりは、たぶん何でもそうなのだと思う。
新しい流れは、最初はいつも物語としてやってくる。
未来が来るぞ、という形で。
でも現実は、そこから長い。地味に進む。思ったほど一気には変わらない。
その時間差を忘れると、話はどんどん派手になる。
要するに、
流れは来ている。
でも、主役交代が完了したわけではない。
未来の話は、どうしても景気よく語りたくなる。
でも、本当に大事なのは、どこまでが今の話で、どこからがこれからの話なのかを見分けることなんだと思う。
短期のガソリン高と長期のエネルギー転換は分けて考えたい
結局のところ、このショート動画には一理ある。
そこは素直に認めたほうがいいと思う。
ガソリン高を何でも中東情勢だけで片づけるのは雑。
それはそうだ。
SAFや廃食油由来燃料が、これからの重要テーマなのも、おそらくその通りだと思う。
ただ、その二つをつないで、
“だから今のガソリン高の本質はここにある”
と言い切ると、少し苦しくなる。
目先のガソリン価格を見るなら、やはり原油、為替、補助金、税制、流通コストといった、もっと直接的な要因を見るべきなのだと思う。
一方で、5年先、10年先のエネルギーの姿を考えるなら、SAF、廃食油、供給網、政策支援、コストの変化のほうが大事になる。
この二つは、関係はしている。
でも、同じではない。
ここを混ぜると、話はきれいになる。
きれいになるけれど、現実は少し見えにくくなる。
今回いちばん面白かったのは、ガソリン高の答えそのものより、
短期の価格変動と長期の構造変化を混ぜると、人は“それっぽい説明”にかなり弱い
ということだった。
自分も、たぶんその一人だ。
だからこういう話を見るときは、最初に信じる前に、一回だけ時間軸を確認したほうがいいのだと思う。
それは今日の話なのか。
それとも、これから先の話なのか。
その区別だけでも、見え方はかなり変わる。
たぶん結論は、それくらいで十分なのだと思う。
大きな答えを急がなくてもいい。
目先の値上がり要因と、中長期のエネルギー転換を分けて考える。
まずはそこからでいい。
だから今日は、派手な物語に酔う前に、どの話が“今”で、どの話が“これから”なのかだけ見分けることにする。


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