ソフトバンクグループの決算を、今回は少し真面目に追いかけてみた。
普段から決算を細かく読むタイプではない。
ただ、今回はOpenAIへの巨額投資、孫正義氏のAI戦略、そしてネット上の強い悲観論が気になった。
決算前には、純利益だけではなく、NAVとLTVを見るべきではないかと考えていた。
そして実際に公式資料を確認すると、その見方は大きく外れていなかったと思う。
※この記事は投資判断を目的としたものではなく、公開資料を読んだ個人の考察メモです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
まず、今回の決算数字はかなり強かった
最初に結論から言えば、今回のソフトバンクグループの決算資料はかなり強かった。
主な数字を整理すると、以下のようになる。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 親会社帰属純利益 | 5兆23億円 |
| 投資損益 | 7兆2,865億円 |
| OpenAIへの出資に係る投資利益 | 6兆7,304億円 |
| NAV | 40.1兆円 |
| 1株当たりNAV | 7,029円 |
| LTV | 17.0% |
| 手元流動性 | 3.5兆円 |
純利益は5兆円超。
NAVは40.1兆円。
LTVは17.0%。
手元流動性も3.5兆円。
この数字だけを見るなら、少なくとも「悪い決算」とは言いにくい。
むしろ、かなり良い決算だったと考えていいと思う。
ただし、今回のソフトバンクグループを見るうえで大事なのは、純利益だけではない。
なぜなら、ソフトバンクグループは普通の事業会社というより、今や戦略的投資持株会社に近いからだ。
売上や営業利益だけを見るより、どんな資産を持っていて、その資産がどれくらい評価され、借金とのバランスがどうなっているのかを見る必要がある。
そこで重要になるのが、NAVとLTVである。
純利益5兆円はすごい。ただ、それだけでは分からない
今回のソフトバンクグループの決算では、親会社の所有者に帰属する純利益が5兆23億円となった。
これはかなり大きな数字だ。
決算説明会資料でも、会社側は「当社史上最高益」「日本企業として史上最高益」という見せ方をしていた。
たしかに、見出しとしてはかなり強い。
ただ、ここで一度立ち止まりたい。
純利益が大きいこと自体は良い。
しかし、その利益がどこから来ているのかを見なければ、実態は分からない。
今回の利益の大きな部分は、OpenAIへの出資に係る投資利益である。
決算短信では、投資損益合計が7兆2,865億円。
そのうち、OpenAIへの出資に係る投資利益が6兆7,304億円とされている。
つまり、今回の利益の主役はOpenAIだった。
ここを見落として、「純利益5兆円だから全部安心」と見るのは少し雑だと思う。
NAVとLTVを見ると、財務危機という見方はかなり難しい
一方で、今回かなり重要だったのがNAVとLTVだ。
NAVとは、ざっくり言えば、ソフトバンクグループが持っている資産から純負債を引いた時価純資産のことだ。
簡単に言えば、
「持っている資産を時価で見て、借金を引いたら、理論上どれくらい価値が残るのか」
を見る数字である。
今回、ソフトバンクグループのNAVは、2025年3月末の25.7兆円から、2026年3月末には40.1兆円へ大きく増えた。
さらに、LTVは18.0%から17.0%へ改善している。
LTVは、保有株式価値に対する純負債の比率だ。
この数字が低いほど、資産に対して借金が重すぎないと見ることができる。
ソフトバンクグループは、通常時のLTVを25%未満に抑える方針を示している。
今回の17.0%という数字は、その方針から見るとまだ余裕がある。
つまり、公式資料だけを見る限り、
「借金で危ない」
「財務危機だ」
という見方は、かなり難しい。
少なくとも、今回の決算資料からその結論を出すのは無理があると思う。
1株当たりNAVは7,029円。株価との比較ではまだ余地がある
ソフトバンクグループの公式NAVページでは、2026年3月末時点の1株当たりNAVが7,029円と示されている。
これはかなり分かりやすい。
株価がこの水準より下にあるなら、単純なNAV比較ではディスカウントされていると見ることができる。
もちろん、株価が必ずNAVに連動するわけではない。
株は理論値だけでは動かない。
よく言われるように、株は美人投票のようなところがある。
市場がその価値を信じるか。
他の投資家がどう見ると思われているか。
将来の不安をどれくらい織り込むか。
そういう心理で株価は大きく動く。
ただ、少なくとも今回の公式NAVを見る限り、ソフトバンクグループの資産価値はかなり大きい。
この点は、素直に評価していいと思う。
ただし、NAVを引っ張っているのはOpenAIとArm
では、これで完全に安心なのか。
そこは少し違う。
今回の決算説明会資料でも、NAVを大きく押し上げた主役はOpenAIとArmだと説明されている。
Armは上場企業なので、市場価格がある。
株価が動けば、ソフトバンクグループのNAVにも反映される。
一方で、OpenAIは非上場企業だ。
ここが難しい。
OpenAIには巨大な価値がある。
ChatGPTのユーザー基盤も大きく、企業向け展開も進んでいる。
ソフトバンクグループ側も、OpenAIの経営陣、研究開発力、コンシューマー分野でのポジション、コンピューティングリソースへのアクセスを評価している。
ただし、OpenAIは市場で日々価格がつく上場株ではない。
つまり、評価額が高いことと、その価値をすぐ現金化できることは別である。
売れるのか。
担保になるのか。
将来のIPOや資金化にどうつながるのか。
競合との関係はどうなるのか。
訴訟やガバナンス面の不安はどこまで影響するのか。
このあたりは、まだ分からない。
だから、今回の決算を見たうえでの一番大きな論点は、やはりOpenAIだと思う。
会社側のストーリーはかなり明確だった
今回のCFOハイライトを見ると、会社側の主張はかなりはっきりしている。
ソフトバンクグループは、AIモデル、AIチップ、フィジカルAI、AIインフラの4領域に注力する。
AIモデルはOpenAI。
AIチップはArmやAmpere。
フィジカルAIはロボHDやABB Robotics。
AIインフラはデータセンターや電力。
つまり、単にOpenAIへ投資しているだけではなく、AIバリューチェーン全体を取りに行くというストーリーである。
これは、かなり大きな構想だ。
ソフトバンクグループは、自分たちを単なる投資会社ではなく、ASI時代のNo.1プラットフォーマーを目指す存在として見せている。
この話を市場が信じるなら、今回の決算はかなりポジティブに受け取られると思う。
一方で、市場がOpenAIの評価に疑いを持つなら、数字が良くても上値は重くなるかもしれない。
確定している事実と、まだ分からないこと
今回、個人的に大事だと思ったのは、事実と推測を分けることだ。
確定している事実は、今回の決算資料がかなり良かったということだ。
純利益は5兆円を超えた。
NAVは40.1兆円に増えた。
LTVは17.0%に改善した。
手元流動性も3.5兆円ある。
1株当たりNAVは7,029円と示された。
これらは公式資料で確認できる数字である。
一方で、OpenAIの将来については、まだ分からないことが多い。
OpenAIの評価額が維持されるのか。
ClaudeやGoogleなどとの競争で優位性を保てるのか。
訴訟やガバナンス問題がどこまで影響するのか。
非上場株としての流動性をどう見るべきか。
これらは重要な論点だが、現時点では将来リスクであり、推測の部分が大きい。
だから、今回の決算をフェアに見るなら、こうなると思う。
現時点の決算資料は非常に良い。
ただし、その強さの中心にOpenAIとArmがある。
特にOpenAIは非上場であり、将来の評価維持や資金化には不透明感が残る。
明日の市場反応は、美人投票になる
株は美人投票だと言われる。
今回のソフトバンクグループも、まさにそうだと思う。
資料だけを見るなら、ポジティブな材料は多い。
純利益5兆円。
NAV40.1兆円。
LTV17.0%。
1株当たりNAV7,029円。
会社側のAI戦略も明確。
普通に考えれば、かなり強い決算だ。
ただし、市場がどう受け止めるかは別である。
すでに株価が上がっていたなら、材料出尽くしと見られる可能性もある。
OpenAIに対する不信感が強ければ、良い数字よりも将来リスクが意識される可能性もある。
逆に、今回の決算で財務不安が後退したと見られれば、ポジティブに反応する可能性もある。
ここは本当に分からない。
だから面白い。
まとめ:決算は良かった。あとはOpenAIを市場がどう見るか
今回のソフトバンクグループ決算を見た感想は、かなりシンプルだ。
決算資料は非常に良かった。
少なくとも、公式資料だけを見て「財務危機」と言うのは無理がある。
NAVは増え、LTVは改善し、手元流動性も維持されている。
数字としてはかなり強い。
ただし、最後はやはりOpenAIだと思う。
OpenAIの価値が本当に続くのか。
OpenAIの評価益は、将来きちんと使える価値になるのか。
市場がこのストーリーを信じるのか。
ここが今後の焦点になる。
今回の記事は投資判断ではない。
あくまで、決算前に立てた仮説を、公式資料をもとに検証した個人メモである。
ただ、ひとつ学びがあった。
決算を見る時は、単に「黒字か赤字か」「利益がいくらか」だけでは足りない。
その会社が何で評価されているのか。
どの数字を見るべきなのか。
市場は何を不安に思っているのか。
そこを先に考えておくと、決算資料の見え方がかなり変わる。
今回のソフトバンクグループは、その練習材料としてかなり面白かった。


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